X

【3Dプリンター】オリジナルのBLTouchとそのコピー品(3D Touch)の精度を比較してみた

 63,947 total views,  1,159 views today

3Dプリンタのオートレベリング用センサーとしてよく用いられているものにBLTouchがある。そして、そのコピー品である3D Touchというものもある。

コピー品の価格はオリジナル品の4割程度となっており、リーズナブルである。

それを理由に私は3D Touchを使ってきたが、オリジナル品は一体どれほどのものなのかと思い、BLTouchも買ってみた。

手元にオリジナルのBLTouchとそのコピー品の3D Touchがあるので、これらの精度を比較してみることにした。

BLTouch(オリジナル品)

価格は40ドル程度である。

AliExpress.comのBIG TREE TECHストアから購入した。現時点(2019年9月16日現在)で最新のものである。

パッケージは顔を模したものとなっていて、面白い感じになっている。

バージョンは、「SMART V3.1」となっていた。

3D Touch(コピー品)

価格は15ドル程度である。

AliExpress.comのTrianglelabストアから購入した現時点(2019年9月16日現在)で最新のものである。

オリジナル品には付属しない延長ケーブルが付いており、使いやすいよう配慮されている。

バージョンは、「SMART V1.2」となっていた。

BLTouchと3D Touchの違い

パッケージの違い

大きく異なっている点は、延長ケーブルの有無である。

  • BLTouch:延長ケーブル無し
  • 3D Touch:延長ケーブル付属

本体の違い

サイズはほとんど同じであるが、プローブピンの長さが異なっている。

バージョンの違い

オリジナルのバージョンが「Smart V3.1」であったのに対して、コピー品のバージョンは「Smart V1.2」であった。

2019年に入手したコピー品のバージョンが「Smart V1.2」であったので、オリジナル品のバージョンの履歴を見ると、現行のオリジナル品より1年半~2年ほど古い設計のものであるようである。

繰り返し精度の比較

3Dプリンターにおいて必要となる精度

3Dプリンターにおいて仮に積層ピッチを0.1mm(=100㎛)で行うとした場合、必要とされる精度はその十分の一である0.01mm(=10㎛)の単位で誤差が収まっていることである。

そして、Ender-3のような格安の3Dプリンターにおいて出力可能な積層ピッチの限度はせいぜい0.1mmである。

この繰り返し精度は、Zプロービングを繰り返し行い、Zの値のばらつき具合(範囲や標準偏差)を見ることで確認できる

M48(Probe Accuracy Test)コマンド

Marlinファームウェア上でM48(Probe Accuracy Test)コマンドを有効にした状態でテストを実行すると、G-codeで設定した回数だけZプロービングが行われ、それぞれのZの値とともに最終的には画像のような「Mean(平均)」、 「Min(最小値)」、 「Max(最大値)」、 「Rnage(範囲)」、 「Standard Deviation(標準偏差)」の値が出力される。

ここでは繰り返しの回数を10回に設定し、これを1セットとして、条件を変えながらBLTouchと3D Touchで10セットずつ測定を行った。

比較時のセッティング

比較したのは、

の2つで、比較時のセッティングは以下の通りである。

  • Ender-3
    • Zモーター:1.8°ステップ角(Ender-3純正品)
    • モータードライバ:TMC2209
    • コントールボード:SKR V1.3
  • ファームウェア
    • Marlin bugfix-2.0.x(2019.09.06版)
    • HOMING_FEEDRATE_Z:4*60
    • BLTOUCH_DELAY:500
  • G-code
    • 「M48 P10 X100 Y100 V2」を条件ごとに10回ずつ実施
    • M48実施前に毎回G28(オートホーム)を実施

また、以下の4つの条件について比較を行った。

  • 条件1
    • ヒートベッド:オフ
    • マルチプロービング:なし
  • 条件2
    • ヒートベッド:60℃
    • マルチプロービング:なし
  • 条件3
    • ヒートベッド:オフ
    • マルチプロービング:2回
  • 条件4
    • ヒートベッド:60℃
    • マルチプロービング:2回

結果

Repeatability Testを5回ずつ実施した時の様子

結果として、BLTouchのほうが3D Touchと比べて条件に左右されず繰り返し精度が安定して高いことが分かった。

ただし、繰り返し精度に関しては、コピー品でも十分に実用的な精度が得られることも分かった。

なお、上で述べたように、あくまでも繰り返し精度を見るものなので、ここで見るべき値は個々のデータのばらつき具合の指標である「範囲」もしくは「標準偏差ということになる

条件1(ヒートベッド:オフ、マルチプロービング:なし)の結果

条件1で各値の平均値(※単位mm、以下全て同様)を比較すると、BLTouchとのほうが3D Touchよりも値のばらつきが少なく、繰り返し精度が高かった

MeanMinMaxRangeSD
BLTouchの平均値-0.0703503-0.0733-0.0670 0.00650.0019574
3D Touchの平均値-0.0554623-0.0606-0.0502 0.01060.0032591

ただし、データ全体の約95%が含まれる±2SDの範囲を見てみると、

  • BLTouch : ±0.0039148mm
  • 3D Touch:± 0.0065182mm

となっており、BLTouchだけでなく3D Touchにおいても0.1mm単位の精度が十分に確保されていることが分かる

BLTouch (SMART V3.1)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.068250-0.071-0.0630.0080.002513
2回目-0.069188-0.073-0.0670.0060.001834
3回目-0.071500-0.074-0.0690.0050.001794
4回目-0.071313-0.076-0.0670.0090.002346
5回目-0.069563-0.073-0.0670.0060.001958
6回目-0.072000-0.075-0.0690.0060.001696
7回目-0.069125-0.071-0.0680.0040.00109
8回目-0.070813-0.073-0.0680.0060.001607
9回目-0.072688-0.075-0.0690.0060.001855
10回目-0.069063-0.072-0.0630.0090.002881
平均-0.0703503-0.0733-0.06700.00650.0019574
  • ローデータ
3D Touch (SMART V1.2)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.056250-0.061-0.0510.0100.003873
2回目-0.052687-0.058-0.0460.0120.003447
3回目-0.051750-0.056-0.0440.0110.003184
4回目-0.050250-0.055-0.0440.0110.003140
5回目-0.055187-0.061-0.0510.0110.002892
6回目-0.057312-0.064-0.0490.0150.004212
7回目-0.056062-0.064-0.0530.0120.003424
8回目-0.055375-0.058-0.0540.0040.001317
9回目-0.057250-0.062-0.0530.0100.003321
10回目-0.062500-0.067-0.0570.0100.003781
平均-0.0554623-0.0606-0.05020.01060.0032591
  • ローデータ

条件2(ヒートベッド:60℃、マルチプロービング:なし) の結果

ヒートベッドを60℃にした条件2では、ヒートベッドがオフの条件1の時と比べて精度の低下がみられ、BLTOUCHと3D Touchの間で値に差はほとんど見られなかった

MeanMinMaxRangeSD
BLTouchの平均値-0.0589751-0.0677-0.05100.01650.0049840
3D Touchの平均値-0.0628311-0.0720-0.05560.01650.0052515

また繰り返しの精度について±2SDの範囲は、

  • BLTouch : ±0.0099680mm
  • 3D Touch:±0.0105030mm

に収まっている。

BLTouch (SMART V3.1)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.046625-0.055-0.0370.0180.005804
2回目-0.054938-0.064-0.0470.0170.005096
3回目-0.064000-0.072-0.0590.0130.003710
4回目 -0.060375-0.066-0.0530.0130.004033
5回目 -0.063625-0.076-0.0570.0190.005137
6回目 -0.057625-0.063-0.0510.0120.004096
7回目 -0.056937-0.066-0.0470.0180.005516
8回目 -0.060563-0.071-0.0480.0230.006240
9回目 -0.058938-0.066-0.0500.0160.005541
10回目 -0.066125-0.078-0.0610.0160.004667
平均-0.0589751-0.0677-0.05100.01650.0049840
  • ローデータ
3D Touch (SMART V1.2)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.053125-0.061-0.0430.0170.005590
2回目-0.064750-0.072-0.0590.0140.003994
3回目-0.066000-0.077-0.0590.0180.006639
4回目-0.069312-0.077-0.0610.0160.004141
5回目-0.057062-0.069-0.0510.0190.006609
6回目-0.062250-0.076-0.0540.0220.006320
7回目-0.072062-0.076-0.0670.0090.003011
8回目-0.065750-0.073-0.0590.0140.004453
9回目-0.051375-0.062-0.0430.0190.005801
10回目-0.066625-0.077-0.0600.0170.005957
平均-0.0628311-0.0720-0.05560.01650.0052515

条件3(ヒートベッド:オフ、マルチプロービング:2回) の結果

プロービングを2回繰り返すマルチプロービングを有効にした条件3では、プロービングが1回だけの条件1よりもBLTOUCH、3DTouchともに繰り返し精度の向上が認められた

MeanMinMaxRangeSD
BLTouchの平均値-0.0543113-0.0569-0.05170.00540.0015854
3D Touchの平均値-0.0649396-0.0695-0.06020.00950.0028024

また、繰り返しの精度について±2SDの範囲は、

  • BLTouch : ±0.0031708mm
  • 3D Touch:±0.0056048mm

に収まっている。

BLTouch (SMART V3.1)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.050300-0.054-0.0470.0070.001967
2回目-0.050738-0.053-0.0460.0070.002085
3回目-0.050925-0.055-0.0480.0070.002083
4回目-0.054613-0.057-0.0530.0050.001387
5回目-0.056100-0.057-0.0540.0030.001145
6回目-0.054725-0.057-0.0530.0040.001230
7回目-0.057425-0.060-0.0530.0080.002077
8回目-0.056687-0.060-0.0550.0060.001582
9回目-0.055513-0.058-0.0540.0040.001248
10回目-0.056087-0.058-0.0540.0030.001050
平均-0.0543113-0.0569-0.05170.00540.0015854
  • ローデータ
3D Touch (SMART V1.2)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.070412-0.076-0.0630.0130.003779
2回目-0.075087-0.083-0.0680.0150.004179
3回目-0.070112-0.075-0.0650.0100.002858
4回目-0.063812-0.070-0.0580.0120.003708
5回目-0.063050-0.070-0.0600.0110.002870
6回目-0.057825-0.061-0.0550.0060.001775
7回目-0.062462-0.065-0.0590.0060.001902
8回目-0.067987-0.070-0.0650.0060.001949
9回目-0.057012-0.060-0.0520.0080.002643
10回目-0.061637-0.065-0.0570.0080.002361
平均-0.0649396-0.0695-0.06020.00950.0028024
  • ローデータ

条件4(ヒートベッド:60℃、マルチプロービング:2回) の結果

条件4では、ヒートベッドが同じ60℃である条件2よりも繰り返し精度に向上が見られるが、ヒートベッドがオフの条件3と比べると精度の低下がみられる

また、3D Touchと比べてBLTouchのほうが繰り返し精度が高いことが見て取れる。

MeanMinMaxRangeSD
BLTouchの平均値-0.0539825-0.0585-0.04960.00900.0028209
3D Touchの平均値-0.0610534-0.0678-0.05530.01260.0036886

繰り返しの精度について±2SDの範囲は、

  • BLTouch : ±0.0056148mm
  • 3D Touch:±0.0073772mm

に収まっている。

BLTouch (SMART V3.1)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.033325-0.042-0.0280.0150.004354
2回目-0.055175-0.058-0.0520.0060.001979
3回目-0.055500-0.061-0.0510.0100.003883
4回目-0.058875-0.065-0.0530.0120.002825
5回目-0.050125-0.055-0.0460.0080.003004
6回目-0.058363-0.063-0.0540.0090.002742
7回目-0.060313-0.065-0.0550.0100.003006
8回目-0.059312-0.062-0.0550.0070.002090
9回目-0.057337-0.060-0.0530.0070.002483
10回目-0.051500-0.054-0.0490.0060.001843
平均-0.0539825-0.0585-0.04960.00900.0028209
  • ローデータ
3D Touch (SMART V1.2)の結果詳細
  • 平均値のまとめ
MeanMinMaxRangeSD
1回目-0.053837-0.060-0.0480.0130.004106
2回目-0.060212-0.069-0.0540.0140.004389
3回目-0.053887-0.061-0.0470.0140.003603
4回目-0.076512-0.084-0.0730.0110.003055
5回目-0.065025-0.073-0.0590.0140.003785
6回目-0.056425-0.060-0.0520.0080.002525
7回目-0.071950-0.078-0.0640.0140.004193
8回目-0.055612-0.064-0.0510.0130.003887
9回目-0.057987-0.063-0.0510.0120.003695
10回目-0.059087-0.066-0.0540.0130.003648
平均-0.0610534-0.0678-0.05530.01260.0036886
  • ローデータ

結果のまとめ

BLTouchとそのコピー品である3D Touchの繰り返し精度について色々と比較してみた結果、BLTouchのほうが安定して繰り返し精度の高いことが分かった

しかしながら、コピー品(3D Touch)でも、 実用上は何ら問題のない精度が得られることも確かである。

オリジナル品とコピー品の価格差が2倍以上であることを考えると、3D Touchのようなコピー品のほうがコストパフォーマンスに優れていると言える。

まとめ

  • オリジナルのBLTouchとコピー品(3D Touch)の繰り返し精度などを比較した。
  • 繰り返し精度はオリジナルBLTouchのほうがコピー品よりも安定して高かった。
  • コピー品の3D Touchでも十分実用的な精度があり、オリジナルのBLTouchよりもコストパフォーマンスが高いと言える。
管理人:

コメントを見る (0)